研究・業績

研究体制

リウマチ内科学では、①多くの膠原病疾患で見出される自己抗体の病態との関連や関節リウマチや血管炎症候群の病態解明の追究といった基礎研究と②自己抗体などのバイオマーカーを用いた早期診断やリスク因子の追究や生物学的製剤や文事標的型抗リウマチ薬ならびに抗線維化薬など新規治療薬による最適治療法の追究といった臨床研究活動が行われています。さらに、以下に示します具体的な研究テーマ以外に、日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化研究事業「統合レジストリによる多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)関連間質性肺疾患(ILD)の個別化医療基盤の構築 (JAMi-AMED)」に参加し、質の高い大規模臨床データベース、CT画像と血清のレポジトリを構築し今後の診断・治療に資する応用基盤の構築を目指しています。さらに、医学生物学研究所ならびに他大学と共同して、筋炎特異自己抗体である抗SRP抗体、抗HMGCR抗体。抗NXP2抗体、抗SAE抗体の実臨床での実用化にも取り組んでいます。

新たな好中球活性化経路におけるHeat shock protein60(HSP60) の役割

血管炎症候群における抗好中球細胞質抗体の病原性に関する研究は多くなされていますが、同抗体の好中球活性化に対する病原性では説明できない症例も経験することから、抗好中球細胞質抗体を介さない活性化経路についての追究をおこなっています。

関節リウマチにおける治療前後のT細胞プロファイルの解析

本学免疫学教室の穂積教授との共同研究による関節リウマチ患者さんにおける治療前のT細胞プロファイルの健常者との比較、ならびに関節リウマチに対する治療前後のT細胞プロファイルの変化と治療薬、治療効果との関連を検討することで、T細胞プロファイル別の個別治療法の検討をおこなっています。

リウマチ・膠原病新刊の病因・病態と関連する新たな自己抗体の追究

これまで、いくつかの未知の自己抗体を見出しており、引き続き、その自己抗体の特異性や臨床上場との関連について検討をおこなっています。未発見の自己抗体は多く存在すると考えられており、それらを同定することはこれまで発見されてきた多くの自己抗体同様に、診断・治療法の選択・活動性の評価・予後の推定ならびに病態解明に資するものと期待されます。

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎/間質性肺疾患の病態解明の試み

臨床的に筋炎症状に乏しい皮膚筋炎(Clinically amyopathic dermatomyositis:CADM) 症例に約140kD 蛋白を認識する自己抗体を見出し、同抗体陽性例は、陰性例と比較して、高頻度に急速進行性間質性肺炎(rapidly progressive ILD:RP-ILD) を併発していることを明らかにしました。その後、対応抗原が、ウィルス感染での自然免疫機構で重要な役割を果たしている蛋白のmelanoma differentiation associated gene 5(MDA5) であることを突き止め、同抗体測定ELISA(酵素結合免疫吸着法)を確立しました。さらに、医学生物学研究所と共同でELISA の臨床現場での実用化に取り組み、2016年10月には抗MDA5抗体検出試薬として保険収載されました。抗MDA5 抗体の測定は、極めて予後不良とされるRP-ILD 併発CADM の早期診断・治療法の選択に有用であり、臨床の現場におけるELISA測定により、同病態の早期診断ならびに早期治療からの強力な治療が可能となりました。その結果、同疾患の予後の改善が認められたことで、臨床医学の発展に寄与しています。さらなる治療法を追究するために、その病態解明のために基礎研究を継続しています。

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎/間質性肺疾患に対する早期血漿交換導入療法の有効性の検討

同病態に対する治療として、現在、高用量副腎皮質ステロイドホルモン薬に免疫抑制薬を2剤併用する強力な治療が推奨されていますが、この治療を持ってしても救命できない症例が経験されます。そのため、当科では、上記治療に加えて、早期から血漿交換療法を併用する治療を試みて、良好な結果を得ています。今後、多施設参加の大規模前向き試験による有効性・安全性の検討を通して実臨床における治療法として確立され、予後の改善につながることが期待されます。

膠原病に伴う進行性線維化を伴う間質性肺疾患に対する抗線維化療法の有効性の検討

膠原病でみられる呼吸器障害の代表的なものが間質性肺疾患(Interstitial lung disease: ILD)であり、予後を規定する重要な因子である。実臨床のILDは、抗炎症・抗免疫療法によっても、徐々に線維化が進行し、長期間の経過で、呼吸機能の低下をきたして、在宅酸素療法が必要になってしまう症例や呼吸不全で死亡する症例を経験する。近年、成長因子抑制やI型・II型プロコラーゲン産生抑制作用のあるピルフェニドンやチロシナーゼ阻害薬であるニンテダニブが抗線維化薬として特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis: IPF) や様々な基礎疾患にともなう進行性線維化を伴う間質性肺疾患(progressive fibrosing interstitial lung disease: PF-ILD)に対する有効性が証明されて薬剤として承認されている。膠原病に伴うPF-ILDに対する検討もおこなわれて、特に、ニンテタニブは全身性強皮症に併発するILDあるいは肺線維症に対する有効性も示されている。しかしながら、本邦において膠原病に併発するILDに対するこれらの抗線維化薬の有効性・安全性、又適応となる症例についての検討はこれからの課題である。

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