教授あいさつ
Kenji Oku
教授 奥 健志
Message from the Professor
リウマチ内科が扱う疾患は膠原病やリウマチ性疾患と呼ばれる疾患群で、皮疹や関節炎、筋炎をはじめ腎炎や間質性肺疾患、肺高血圧症といった重要臓器病変をしばしば伴う自己免疫疾患です。このため、診療には高度な専門性と広い視野を持った総合的なアプローチが求められます。
従来、リウマチ・膠原病疾患ではグルココルチコイド(ステロイド)を主体とした治療が行われていましたが、近年はさまざまな免疫抑制薬や分子標的薬が次々と登場し、これらをうまく組み合わせた、副作用が少なく、より効果的な治療法が標準となっています。当科では新しい知見や治療法を積極的に導入し、患者さん一人ひとりに最適な治療戦略を提供することで、長期的に安定した生活が送れるよう全面的にサポートします。
リウマチ性疾患は、すべての年代で発症しますが、若年期の発症も多く、患者さんは学業、就職、結婚、出産、子育てなど人生の重要なイベントを迎えることになります。それぞれのライフステージにおいて患者さんに寄り添いながら、きめ細かなサポートを提供し、病気を克服しながら充実した日常生活が送れるようお手伝いいたします。
神奈川県西部は広域で多様な患者層が存在する地域です。当科は地域の医療機関との緊密な連携をしっかり構築していくことによって地域に根ざした質の高い医療の提供を目指します。リウマチ・膠原病診療に関する専門的な知識や技術を地域全体に還元し、この地域の医療の発展に貢献してまいります。
東海大学医学部リウマチ内科スタッフ一同、地域医療の充実と患者さんのより良い未来のために尽力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
教室の沿革
東海大学医学部リウマチ内科学の発足は、1974年に遡り、有森茂先生を岡山大学から教授として迎え第4内科の一部門としてスタートし、1987年には血液・リウマチ内科、血液・腫瘍・リウマチ内科と名称が変更となりました。
2005年に、聖マリアンナ医科大学より鈴木康夫先生が、リウマチ内科部門の教授として就任し、東海大学医学部付属病院難病治療研究センター長を兼任しております。その後、2015年、佐藤慎二先生が教授ならびに東海大学医学部付属病院難病治療研究センター長に就任し、2017年にリウマチ内科として単科となりました。そして2025年4月から奥健志教授がリウマチ内科教授兼難病治療研究センター長を兼任しており、リウマチ・膠原病疾患の高度先進医療と病因解明に日々活動をしております。
教室の特色
当教室では、全身性エリテマトーデス(SLE)およびその類縁疾患である抗リン脂質抗体症候群(APS)、関節リウマチ(RA)を中心に診療・研究を進めています。これらの疾患は膠原病・リウマチ性疾患の中核をなすものであり、その病態理解は間質性肺疾患や感染症など、膠原病領域全般にわたる重要な合併症や関連病態への対応にも大いに役立っています。
研究面では、免疫学的視点から病態を深く掘り下げることに力を入れています。特に自然免疫系の異常、とりわけ近年注目されている補体異常に着目し、基礎的な研究から臨床への応用まで幅広い展開を図っています。これらの研究成果は、患者さんの治療においても新たな視点や治療法の開発につながっています。
一方、臨床現場では分子標的薬や免疫抑制薬の進歩によって、生命予後や機能予後が著しく改善しました。それに伴い、従来から使用されているグルココルチコイド(ステロイド製剤)は、合併症のリスクを最小限に抑えるため、必要な場合に限って短期間・少量で用いることが推奨されるようになっています。この治療法の進化により、単に生命予後を延ばすだけでなく、患者さんが社会生活を健常者と同様に送ることのできる「社会的寛解」を新たな目標としています。
こうした診療・研究活動を支えるのは、コンパクトで柔軟なチーム運営です。少人数である利点を活かし、スタッフ間のコミュニケーションを密にとることで情報共有を促進し、互いの疑問や不安を迅速に解消することが可能となっています。また、医局員同士が日常的にサポートし合い、業務の効率化を意識することで、限られた時間の中でも質の高い成果を出せるよう工夫しています。
当教室では、これらの特色を活かし、患者さんが少しでも早く社会的寛解を実現できるよう、チーム一丸となって診療・研究に取り組んでまいります。